奈良の蚊帳織り

歴史を繋ぎ未来へ紡ぐ世界に誇る奈良の蚊帳織り

伝統技術をブランドに

奈良県織物工業協同組合では「奈良の蚊帳織り」の商標登録を出願いたしました。

奈良県における織物業の発展を目的として昭和22年2月に設立した当組合には、明治時代より蚊帳に使用する目の粗い生地を織る技術を継承し、研鑽に努めてきた企業が加入しております。主に粗密度(経糸、緯糸の打ち込み本数がそれぞれ10~25本/吋程度)の生地を得意としています。

今回、グローバル化の波が押し寄せ競争が激しくなっている中、奈良県の伝統ある蚊帳織りの技術を守りつつ後世へ継承していくため、「奈良の蚊帳織り」ブランドを立ち上げました。
「奈良の蚊帳織り」では、確かな技術をもった企業の商品を証明するためのブランドとなっており、ロゴマークが使用されている商品は市場の廉価品・粗悪品と比較して、吸水性や速乾性に優れ、本来の素晴らしさを利用者の方々に認知してもらうことを目的としています。

歴史ある奈良だからこそ生まれた伝統技術。

「奈良の蚊帳織り」は、江戸幕府御用達品である麻織物の「奈良晒」、日本で初めて綿花を栽培して生まれた綿織物の「大和木綿」「大和絣」という織物の産地で培われて、向上した織りの技術は現代の様々な商品へと活躍の場を広げています。

国内生産量No.1

奈良の蚊帳生地の生産量は、国内No.1を誇ります。

蚊帳生地の用途として最もシェアが大きいものが「蚊帳織りふきん」です。蚊帳織りふきんで使用される生地の大部分は、奈良県織物工業協同組合に所属している会社が生産出荷しています。奈良県下のふきんの年間生産枚数は組合推定で400万枚(5枚重ね)。生地にすると500万m相当になります。

蚊帳織物に関わる全部整経、部分整経、アラ巻整経、サイジング、ワインダー、織機(普通織機、エアージェット、レピア、プロジェクタイル)、オーバーマイヤー、テンター等、豊富な設備を持ち、原糸の特徴を活かした生活に役立つ、高品質な織り目の粗い生地製造を得意としています。

蚊帳生地は目がズレやすい打ち込み本数の少ない粗い生地の特性上、強度を上げるために糊付け加工が行われます。経糸と緯糸の織りなす空間は碁盤の目のように正確であることが必要とされるため、糊付け加工の技術がより高度に進歩しました。

糊付け加工技術の高度化と共に染色も多様化し、オーバーマイヤーによる後晒しやディッピング染色もできるようになりました。

優れた吸水性と速乾性

蚊帳生地の特性は、他の生地に比べて吸水性と速乾性に優れている点にあります。
この特徴をベースにデザイン性、機能性を追加してふきん等の生活関連商品の開発が行われ、さらに様々な工業用品へと展開されています。

吸水性

蚊帳織り生地の吸水性を確かめるために下記の実験を行いました。

実験手順
  1. ふきん用生地4種を5分間煮沸し、1日乾かす
  2. 乾いた生地を同サイズ(10cm×15cm)に切り、重さを計測
  3. 水の張ったトレイに5分間浸す
  4. 濡れた4種の生地の重さを再度計測
実験結果

実験手順の②と④で計測した重さの差が吸収した水の量を判断でき、より差が大きい「奈良の蚊帳生地ふきん」が最も吸水性に優れている結果となりました。

商品名 生地重さ(g) 5分浸水後の
生地重さ(g)
推定吸水量(g)
奈良の蚊帳生地ふきん 9.17 47.87 38.70
ふきん用生地A 9.97 37.34 27.37
ふきん用生地B 8.75 45.31 36.56
ふきん用生地C 5.13 27.79 22.66

速乾性

蚊帳織り生地の速乾性は、生地自体の通風性の良さに起因しています。

奈良の蚊帳生地ふきん(5層構造)と広く普及している大手メーカー製ふきん(1枚もの)とを比較検査したところ、蚊帳生地ふきんが3.5倍以上通風性に優れている結果になりました。

蚊帳生地ふきんは多層構造で商品の厚みはありますが、1枚1枚は織目の粗い生地のため、結果として速乾性に優れた機能を持っていると考えられます。

通風性試験データ(PDF)

広がる蚊帳織り技術の用途

優れた吸水性、速乾性のある生地をつくれる蚊帳織りの技術は、代表的な蚊帳生地ふきん以外にも、ふすま地、布団、ブラックガーゼ、ガーゼ生地、ブッククロス、寒冷紗、カーペット基布、床材基布、日よけネット、網戸、ターポリン基布、防水布、帆布、フィルター基布(ハニカム)など、時代と共に「奈良の蚊帳織り」は約150年間、用途開発を続けながら脈々と続いています。

寒冷紗

農業用寒冷紗の用途は斜光や防虫、防霜、塩害防止、遮熱などで、蚊帳織り技術の特徴である目の粗い織物を特殊な樹脂で後加工し、織物を硬く仕上げ目ずれ防止しています。工業用寒冷紗は建材用、土木用、建材用、自動車シートの補強基布、ブッククロス、フィルターなど素材と合わせて補強する布として活躍しています。

襖紙(ふすまがみ)

襖は湿気を吸収し湿度を調整する役割があるため、通気性が高く、紙の強度をあげるのに適した蚊帳織りの生地が採用されました。その後、意匠糸やドビー織を活用することによってデザイン性が高い織物へと進化しています。紙と貼り合わせるので、同様に木が由来のレーヨン糸を主に使用しています。

壁紙

和から洋へと建築様式の変化とともに、織物襖紙から壁紙へ活躍の巾が広がっています。襖紙に使用される生地に比べ密度が倍以上に詰まり、レーヨン糸に加えリネンや和紙の糸など様々な素材を使用しているのが特徴です。

ストール

蚊帳織り技術を活用したストールは、蚊帳織り生地の特性を活かし薄く軽いのが最大の特徴です。 季節は春夏がメインになりますが、冬でもコートの下でかさばらないのでスマートに着用することができます。

ラッピング生地

ラッピング生地は、蚊帳織り技術のさらなる応用として誕生した商品の1つです。蚊帳生地よりも目の粗い生地で、多色のカラーバリエーションがあり、素材も綿・麻・レーヨン・ラメなど多くの種類があります。主にギフト等のラッピングとして使用されています。

奈良の蚊帳織りの歴史

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